医療者と患者のコミュニケーションが「対話」になるとき
さて、医療者と患者のやりとりになぜ「対話」が必要なのでしょうか。
医療者と患者の対話において、医療者にとって大切なのは、患者から重要な情報を手に入れ、また患者に対して診断や治療方法についての提案を適切に伝えることです。他方で、患者の側としては、自分の心配ごとを対話にうまく持ち出すこと、自分が治療のプロセスに対して協力者であると感じられるようにすることと言えるでしょう。
ドイツの哲学者ホルスト・グロンケは、医師と患者のやりとりがうまくいったときには、その相互作用が一方向的ではなく、双方向的となり「対話」となると言います(文献2)。「短時間の診断とそれに続く薬の処方では、今日の患者たちはもう満足しないと言っていい。(中略)医師の側ではたんに指示を出すだけではなく、患者の質問、気がかり、不安を引き受けること、いや患者を励まして話をするように仕向け、できるだけたくさんのコミュニケーションがとれるようにすることが必要なのである」と彼は述べています。
「対話」を成立させるためには、自分の意見や判断を一旦カッコでくくり、相手の発言や行動の裏にある考えや価値観を理解しようとすること、つまり「聴くこと」が決定的に重要なのです。医療者と患者のやりとりにおいて、今日ではますます「対話」が必要とされています。(続く)
[文献]
2)中岡成文:医療におけるコミュニケーションと「ソクラテス的対話」. 雑誌『医療・生命と倫理・社会』Vol.1, No.1. 2001年.
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