「対話」的な医療コミュニケーションでは医療訴訟が少ない?
医療者と患者の間のコミュニケーションにおいて「対話」が成立することの効果は、いくつかの研究結果からも示されています。
1997年に行われた米国オレゴン健康科学大学の研究では、訴訟を起こされた医師とそうでない医師、計124人において、医師と患者との会話を記録分析し、その内容にどのような違いがあるのか比較しました(文献3)。結果は、訴えられた医師はそうでない医師に比べて、診療時間が短く(1.5〜3分短い)、パートナーシップのためのやりとり(例えば、患者の意見や話したことの理解、診察への期待を尋ねる、患者が言ったことを言い換えたり解釈したりする)が少なく、ユーモアや笑いが少ない、といった違いが認められました。パートナーシップのためのやりとりとは、「対話」が成立するようなやりとりとほぼ同義と考えてよいでしょう。つまり、対話的なコミュニケーションが少ないと、患者の満足度や医師に対する信頼が下がり、医療訴訟が多くなると考えることができます。
一方、医療者側に「対話」的態度が求められるだけでなく、患者側も「対話」を学ぶ必要があるでしょう。医師の説明が分かりにくい場合などは積極的に質問すること、患者として心配していることが伝わっているか、双方向のやりとりの中で確認すること、などが重要となります。こうした「対話力」を医療者も患者も学び、コミュニケーションを共同作業としていくことが、「対話」につながっていくのです。。。(終わり)
[文献]
3)Levinson, W., Roter, D.L., Mullooly, J.P., Dull, V.T., Frankel, R.M. (1997). Physician-patient communication. The relationship with malpractice claims among primary care physicians and surgeons. Journal of the American Medical Association, 277, 553-559.
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医療者と患者の「対話」がなぜ必要か?(02)